初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される
音楽に合わせて、彼に導かれるまま体を預ける。

近い。思っていたよりも、ずっと近い距離。

その温もりに、心が揺れる。

「……なぜ、ここまで優しくしてくれるの?」

思わず、問いがこぼれた。

視線を上げると、彼は迷いなく答える。

「君が俺の妻だからだ」

そのまま、引き寄せられる。

腕の中に収められるような感覚。

胸が、強く鳴る。

敵なのに。私の国を滅ぼした相手なのに。

どうして、こんなふうに守るのか。

理解できない。

「……ここまでしなくていいわ」

思わず口にしていた。

そのまま、わずかに距離を取る。

これ以上近づけば、何かが壊れてしまいそうで。

彼の温もりから離れながら、私は自分の心の揺れを持て余していた。
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