初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される
「大丈夫ですか? 皇太子殿下」

他国の貴族が、探るような視線で近づいてくる。

「心配は無用です」

彼は、淡々と答えた。

だがその貴族は、私をちらりと見て言う。

「本当にこの方は、皇太子妃なのですか?」

空気が、わずかに張り詰める。

さらに低い声が続いた。

「しかし、滅ぼした敵国の皇女など――」

その瞬間、彼は即答した。

「当たり前だろう」

一切の迷いがない。

そして、わずかに口元を緩める。

「疑うなら、証拠を見せようか」

次の瞬間、頬に柔らかな感触が触れた。

「……っ」

息が止まる。

彼の唇が、私の頬に触れている。

驚いて、思わず彼を見上げる。

大きく見開いたまま、言葉も出ない。

そんな私を見下ろす彼の表情は、どこまでも穏やかで――

気づけば、私は初めて彼を違う目で見ていた。
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