初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される
腕を引かれたまま、私は彼を見上げた。

「……私の護衛ですよ?」

思わず口にすると、彼はわずかに目を細める。

「護衛でも、距離が近すぎる」

淡々とした声。

それだけなのに、胸が小さくざわついた。

なぜ、そこまで気にするのか分からない。

けれど、その一言が妙に残る。

その時だった。

「殿下!」

明るい声が割って入る。

振り向くと、若い娘が駆け寄ってきていた。

無邪気な笑顔で、迷いなく彼の前に立つ。

「お会いできて嬉しいです!」

距離が近い。

あまりにも自然に、彼へと向けられる視線。

私は一歩、無意識に距離を取っていた。

胸の奥が、わずかにざわつく。

けれど、その理由をまだ言葉にできなかった。
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