初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される
「……嫉妬しないのか?」

突然の問いに、私は瞬きをした。

「嫉妬? 誰にですか?」

彼は一瞬だけ沈黙し、それから低く続ける。

「さっきの娘だ。俺に近づいてきた」

距離が、さらに近づく。

「もし俺が、あの町娘を気に入ったらどうする」

試すような視線。

けれど私は、迷わず答えた。

「どうもこうも、お好きになさればいいでしょう」

その言葉を口にした瞬間、胸の奥がわずかに痛んだ。

だが彼は、はっきりと首を振る。

「心配しなくていい」

低く、確かな声。

「君だけだ」

逃げ場のない距離で、見つめられる。

「俺の心を捉えるのは」

息を呑む。

動けない。

そのまま、そっと額に温もりが触れた。

「……っ」

優しい口づけ。

ただそれだけなのに、胸が強く鳴り続けていた。
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