初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される
額に残る温もりに、胸が大きく跳ねる。

一気に顔が熱くなるのが分かった。

「……なぜ、こんなことを」

視線を逸らしながら、なんとか言葉を絞り出す。

落ち着かない。

触れられただけなのに、心が乱されている。

すると彼は、あっさりと答えた。

「俺の妻だ。キスして何が悪い」

当然のような言い方。

反論の余地もないほど、真っ直ぐで。

言葉を失う私を見て、彼はわずかに笑った。

そのまま、片腕で引き寄せる。

逃げる隙もなく、体が彼に触れる。

「……っ」

息が詰まる。

けれど、振りほどけない。

「俺は、君を諦めるつもりはない」

低く、確かな声。

その言葉が、胸の奥に深く沈んでいく。

拒んでいるはずなのに。

どうしてか、その腕の中から離れられなかった。
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