初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される
私は、ゆっくりと顔を上げる。

扉の向こう。

炎の向こう側から、一人の男が歩いてくる。

その姿は、戦場の中にあっても、異様なほど静かだった。

黒の軍服。無駄のない動き。そして――鋭い視線。

彼が近づくたび、誰もが道を開ける。

その意味を、私は理解していた。

「……敵国の、皇太子」

思わず、呟く。

彼は私の前で足を止めた。

じっと、見下ろしてくる。

その視線は、まるで――

ずっと前から探していたものを、ようやく見つけたかのようで。

そして、彼は静かに言った。

「……やっと見つけた」

意味が分からない。

なぜ、そんな目で私を見るのか。

理解できないまま、私は彼を睨み返した。

「何を言っているの」
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