初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される
すると彼は、ほんのわずかに口元を緩めて――

言った。

「君を、連れて帰る」

あまりにも当然のような言い方に、私は思わず眉をひそめた。

「……戦利品として?」

吐き捨てるように言う。

その問いに、彼は一瞬だけ目を細めた。

そして、はっきりと否定する。

「違う」

低く、揺るがない声。

一歩、距離を詰めてくる。

逃げることも、拒むこともできない距離。

「――花嫁としてだ」

その言葉に、思考が止まった。

周囲がざわめく。

「な……っ」

誰かが声を上げ、兵たちが顔を見合わせる。

当然だ。敵国の皇女を、花嫁として迎えるなど――あり得ない。

けれど、彼はまるでそれが決まっていることのように、私を見つめていた。

その視線から、逃げられない。
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