初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される
セリオスの言葉が、胸の奥で何度も反響する。

――あの男は敵だ。

分かっている。

それなのに。

脳裏に浮かぶのは、あの人の姿ばかりだった。

花園で見せた、穏やかな表情。

「……でも、あの方は優しかった」

思わず、声に出してしまう。

あの時、無理に触れようとはしなかった。

ただ、隣に立ってくれていた。

次に浮かぶのは、夜会の光景。

冷たい視線に晒される私を、彼は迷いなく庇った。

「……私を、守ってくれた」

胸が、じんわりと熱くなる。

そして――

額に落ちた、あの優しい口づけ。

「……何より」

言葉が、震える。

「私を、求めてくれた」

ただの政略ではない。

あの人は、私を選んだ。

それが、どうしようもなく――

心を揺らす。

「……違う」

首を振る。
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