初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される
これは、惑わされているだけ。

そう思おうとするのに。

胸の奥で、何かが静かに変わり始めていた。

「そんなのは、すべてあの男の計算です」

セリオスの声が、冷たく響く。

私は思わず息を呑んだ。

「甘い態度を見せびらかして、あなたの体を弄ぼうとしているのです」

「……そんな……」

否定したいのに、言葉が続かない。

胸の奥で、何かが軋む。

「我らの国を滅ぼした男ですよ」

一歩、距離を詰められる。

逃げ場がない。

「女の心くらい、たやすく奪えます」

その言葉が、深く突き刺さる。

――本当に、そうなのだろうか。

あの優しさも、すべて演技だとしたら。

私を油断させるためのものだとしたら。

「しっかりしてください」

強く、言い切られる。
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