初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される
揺れていた心が、無理やり引き戻される。

「あなたを待っています」

その声は、どこまでも真剣で。

「あなたの国の民が」

その一言が、すべてを決めた。

胸の奥にあった迷いが、音を立てて崩れていく。

――私は、皇女だ。

そうである以上、選ぶべきものは一つしかなかった。

胸の奥で、何かが静かに定まっていく。

揺れていたはずの心が、ゆっくりと一本の線に収束していく。

私は顔を上げた。

「……私は、民を見捨てない」

その言葉は、思っていたよりもはっきりと響いた。

迷いは、もうない。

脳裏に浮かぶのは、あの町の光景。

笑い声に満ちた市場。

楽しそうに走り回る子供たち。

あの国は、確かに幸せそうだった。

――だからこそ、思う。

「私の国も……あんなふうに」

言葉を紡ぐ。
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