初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される
「活気に溢れる町にしたい」

ただ生きるだけではなく、笑っていられる場所に。

それは、きっと贅沢ではないはずだ。

「私達の国にも、幸せになる権利があるはず」

胸の奥が、熱くなる。

自分の感情よりも、大切なものがある。

それが何か、私は知っている。

だから――

私は、選ぶ。

皇女として、正しい道を。

胸の奥で燃えていた迷いが、静かに消えていく。

残ったのは、ただ一つの決意だった。

私はゆっくりと顔を上げる。

夜の闇の中で、まっすぐに前を見据える。

「……私は」

声は不思議なほど落ち着いていた。

揺れも、迷いもない。

「今、我らの国のために起つ」

その言葉が、はっきりと空気を震わせる。

セリオスの表情が、わずかに緩んだのが分かった。

けれど、私は視線を逸らさない。

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