初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される
「私を、味方になってくれる貴族の元へ連れて行くのです」

命じるように、言い切る。

それはもう、願いではない。

皇女としての、決断。

胸の奥が、わずかに痛む。

何かを置いていくような感覚。

けれど、それでも――振り返らない。

私は、この道を選んだのだから。

たとえその先に、どんな未来が待っていようとも。

私の言葉を聞いた瞬間、セリオスの表情が大きく緩んだ。

「さすが、我らの皇女だ」

安堵と誇りが混ざった声。

次の瞬間、強く抱きしめられる。

「……セリオス」

突然のことに、戸惑いながら名を呼ぶ。

その腕は迷いがなく、離す気配もない。

「このセリオスが、どこまでもお伴します」

真っ直ぐな言葉。

揺るがない忠誠。

けれど――

胸の奥が、なぜか静かなままだった。
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