初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される
「……ふざけないで」

ようやく絞り出した声は、かすかに震えていた。

だが彼は、少しも揺るがない。

ただ静かに告げる。

「ふざけていない」

そして、私の手を取った。

強引ではないのに、逃れられない力。

「君は――俺のものになる」

その瞬間、私の運命は、完全に奪われた。

敵国に連れて行かれた私。

玉座の間のざわめきは、すぐに収まった。

代わりに響いたのは、重臣たちの低い声。

「両国の争いを終わらせるためにも……」

「和平の象徴として、婚姻は最も有効かと」

まるで、すでに決まっていることの確認のように話が進んでいく。

私はただ、その場に立ち尽くしていた。

――冗談ではない。

「お待ちください」

はっきりと声を上げる。

すべての視線が、私に集まった。
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