初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される
私は、その場で足を止めた。

もう、逃げることはできない。

ゆっくりと彼を見上げる。

「……私は、自分の国を再興します」

はっきりと言い切る。

彼は一瞬だけ目を細め、静かに返した。

「再興?」

低い声が、夜に響く。

「あの国は、もう我らの国だ。町の整備も整っている」

その言葉に、胸が強く揺れる。

だが、首を振った。

「……あなたの国ではありません」

視線を逸らさず、言い返す。

「我らの国です」

逃げ場のない対峙。

私は、無意識に身構えていた。

その時、彼がゆっくりと馬を降りる。

距離が、近づく。

「落ち着け」

低く、しかし穏やかな声。

「あの領土は、もう俺と君の国だ」

一歩、さらに近づく。

「君一人で、抱え込む必要はない」

その言葉に、心が揺れそうになる。

それでも、私は問いかけた。

「……捕まえに来たのですか」

覚悟を決めた声で。

彼の答えを、待ちながら。
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