初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される
逃げ場のない距離。

彼の手が、そっと私の頬に触れた。

その温もりに、息が止まる。

「……一生、俺の側にいてくれ」

低く、まっすぐな声。

揺らぎのない願い。

目を逸らせない。

そのまま、さらに近づく。

「君を初めて見た時」

指先が、わずかに震えた気がした。

「君は『殺せ』と言った」

胸の奥が、強く締めつけられる。

「あの時、胸を撃ち抜かれた」

静かに、けれど確かに熱を帯びた声。

「恥ずかしいくらいに――一目惚れなんだ」

言葉が、胸の奥に深く落ちていく。

逃げられない。

「俺の心を掴んで離さないのは」

視線が絡み、呼吸が乱れる。

「君しか、いない」

その一言で、すべてが崩れそうになった。
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