初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される
「私は、そのようなこと――受け入れるつもりはありません」

静まり返る空気。

だが次の瞬間、隣に立つ彼が口を開いた。

「これは、両国のためだ」

低く、揺るがない声。

「和平の証として、お前はここに必要だ」

まるで理を説くような言い方。

けれど、その瞳は違った。

真っ直ぐに、私だけを見ている。

一歩、距離を詰めてくる。

「だが、それだけではない」

胸がざわつく。

逃げたいのに、動けない。

そして彼は、迷いなく言った。

「――俺が望んだ」

息を呑む。

それは命令でも、建前でもない。

ただの、個人的な願い。

だからこそ、逃げ場がない。

「お前は、俺の妃になる」

その瞬間、すべてが決まった。

抗う余地など、最初からなかったのだ。
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