初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される
彼の手が、そっと頬に触れる。

その温もりに導かれるように、唇が重なった。

やさしく、深く。

気づいた時には、背中がベッドに触れていた。

「あ……アルヴィオン……っ」

思わず名前を呼ぶと、彼の視線がさらに熱を帯びる。

「……綺麗だ」

低く囁かれ、心が震える。

「もう、俺のものだ」

その言葉に、胸が締めつけられる。

拒むはずだったのに――

もう、その気持ちはどこにもなかった。

唇が何度も重なる。

離れても、すぐにまた引き寄せられる。

確かめるように、何度も。

優しく触れられるたび、体の奥まで満たされていく。

逃げ場のない距離。

けれど、それは束縛ではなく――

望んでしまう温もりだった。

私はその腕の中で、静かに目を閉じる。

もう、この人から離れたくないと。

心の底から、そう思いながら。
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