初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される
彼に、強く抱き寄せられる。

逃げ場のない腕の中。

けれどその力は、優しくて――離したくないと願ってしまう。

一つに重なった体の中で、吐息が混ざる。

「……っ」

息が乱れる。

こんなにも近くにいるのに、まだ足りないと感じてしまう。

彼の温もりが、私の体の中に広がっていく。

「もう、離さない」

耳元で、低く囁かれる。

その声だけで、胸が震える。

「一晩中……離すつもりはない」

まっすぐな言葉。

逃げ場を与えないのに、不思議と怖くない。

むしろ――このまま、この腕の中にいたいと願ってしまう。

私はそっと彼にしがみつく。

離れないように。

もう二度と離れたくないと、心から思いながら。
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