初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される
私は、気づけば自分から彼に腕を回していた。

逃げていたはずなのに。

今は、その温もりにしがみついている。

「あ……とろけそう……」

思わず零れた言葉に、彼が低く笑う。

「いいんだよ」

優しく、包み込むように。

「二人の夜だ」

その一言で、心の最後の壁が崩れる。

彼はそっと、私の胸元に顔を寄せた。

触れられるたびに、体が震える。

「……全部、俺のものだ」

静かで、けれど強い独占の言葉。

逃げたいとは思わない。

むしろ――もっと近くにいたい。

視線が重なる。

すぐそこに、彼がいる。

「……好き……」

やっと、言えた。

本当の気持ち。

彼は一瞬だけ目を細めて、まっすぐに返す。

「俺もだ」

そして、優しく囁いた。

「愛してる、リゼリア……」

その言葉に、胸がいっぱいになる。

もう、迷いはどこにもなかった。
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