初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される
「ああ……ダメ……」

私は心も体も、限界を感じていた。

「いこう、一緒に……俺達の楽園に……」

囁きが、耳元でほどける。

「このまま……俺と離れずに」

その瞬間、全身に波のような感覚が広がった。

「あああ……」

彼の腕の中で、すべてがほどけていく。

強く、深く、重なり合う感覚。

もう、何も考えられない。 

言葉にならない声が、静かな夜に溶けていく。

ただ――彼と一つになっている、その実感だけが残る。

「……リゼリア」

かすれた声。

その声に応えるように、ぎゅっと抱きしめ返す。

すべてが満たされていく感覚。

それ以上、言葉はいらなかった。

ただ、同じ呼吸を感じているだけで十分だった。

やがて、彼の腕の力が少しだけ緩む。

けれど離れることはなく、むしろそっと引き寄せられる。

私はそのまま、彼の胸に顔を埋めた。
< 67 / 71 >

この作品をシェア

pagetop