初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される
私はただ、静かに歩みを進めた。

一歩、また一歩と。

この先にいる男のもとへ。

ヴェール越しに、その姿が見える。

黒の正装に身を包んだ皇太子――アルヴィオン。

微動だにせず、ただ私を待っている。

その視線だけは、はっきりと分かった。

まっすぐに、逃がさないように。

思わず、わずかに視線を上げる。

そして、そのまま睨みつけた。

――あなたの思い通りにはならない。

言葉にしなくても、そう伝えるように。

だが彼は、何も言わない。

ただ静かに、その場に立っている。

やがて私は、彼の隣へと並んだ。

距離が、近い。

触れれば、すぐに届く距離。

けれど私は、一歩分だけ、わずかに間を空けた。

その小さな拒絶に気づいたのか、彼の視線がわずかに揺れる。
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