紅き月夜に 永遠の想い~運命に導かれた月夜の出逢い~
これはどういうことか説明してください!①
チュン、チュン、チュン……チチチチチチ。
賑やかに囀りながら、夜が明けたことを告げにきた小鳥たちが、嘴の先でコツコツコツと窓を叩く。どうやら餌をせがんでいるようだ。
朝、目覚めたら軒下に集まる小鳥たちに餌をやることも、毎日の日課の一つだが、昨日は厄日かと思うほどの災難に次ぐ災難に見舞われ、正直、まだもう少し眠っていたい。
ごめんね。あと一時間くらい寝たら起きるから、それまで待っていてね。
賑やか―――と言うよりは、騒々しい小鳥たちの囀りから避難しようと思って、寝返りを打った拍子に、こつり、と何かが当たった。
……ってあれ?
私こんなトコに何かぶつけるような物、置いてたっけ?
うっすらと瞼を開いた私は次の瞬間、上半身ほぼ素っ裸――正しくはシャツを着ているがほぼ開けている――で、すうすう、と寝息を立てている絶世の美形が、添い寝をするように自分の真横で眠っている姿を視界に捉え。
「ひ……ひぎゃああああああああああ!?!?」
天にも轟く大絶叫を上げていた。
私の大絶叫に驚いて、飛び起きたアレクが、枕元に置いていた剣を引っ掴む。
「どうしたっ!? 何があったんだ!?」
「な、な、な……なんでアレクが私と一緒のベッドで寝てんのよっ!?」
水槽で泳ぐ金魚がごとく、口をぱくぱくとさせて絶句していた私は、緊迫した声を張り上げたアレクを見返すと、ふるふると震える指を突きつけた。
いったい何がどうなっているのか、さっぱり理解できない。
なぜ目が覚めたら、隣に半裸のアレクがいるのよ!
とそこまで考えて、私はざざっと蒼褪めると、被っていた毛織りの掛け布を、がばっ、と引っ剥がし、自分が着ている衣服に乱れがないか慌ててチェックした。
ぱっと見た感じでは衣服を乱された形跡は見当たらない。
いやでもしかしっ、と、今度は自分の身体に何か異変は起きてないかと探ってみたものの、下腹部が妙に痛むだとか、腰がものすごく重だるく感じるだとか、変な疲労感に襲われているだとか、そういった事象もなさそうだ。
頭を過った『一夜の過ち』というゴシップ見出しが立ち消えたことに、ほう、と胸を撫で下ろしていたら、呆気に取られた表情で、こちらを見ているアレクと、がっつり目が合ってしまった。
「――……なあ、お前。もしかして、たったそれだけの事で、あのような悲鳴を上げたのか?」
目が合うなり、アレクは呆れたような口調で言って、馬鹿にしたように溜め息を吐く。
「たったそれだけのこと、じゃないわよ! アレクのばかばかばか――――っ!!」
「って、おい、こらっ! いきなり何するんだ!」
「枕で殴られて当然でしょっ!? っていうか、なんでアレクが私と一緒のベッドにいるのか説明しなさいよ!」
「……っ、このじゃじゃ馬が。いい加減にしろ!」
あまりに無遠慮なアレクの発言に、かちん、と頭にきて、手元に転がっていた枕を引っ掴んで、アレクの頭と身体をばしばしと枕で叩いていたら、反撃に転じたアレクに枕を掴む手を掴まえられた。
がっちりとホールドする指に力を籠めて、アレクが、ぎりぎりと容赦なく、手首を捻り上げる。
「い、いたいいたいいたいいたいいたい――っ! 暴力反対いいぃいいいい!!」
「先に手を出してきたのは、お前の方だろうが。で、お前が言いたいことはそれだけか?」
捻られた手首の痛さに顔を歪ませながら、掴んでいた枕を、ぽろり、と手放して降伏したものの、いつまで経っても、アレクは手を放そうとしない。
いつまで掴んでいるんだ! いい加減に離さぬか! と自由が利く方の手で、アレクの腕をぱしぱしと叩いて、離せー! と涙目ながらに訴えかければ、ようやく放してくれた。
掴まれた手首を何となしに見てみれば、アレクの指の形が、くっきりと残っているではないか!
ぐぬぬぬぬ、アレクのやつめー! 乙女の柔肌に指の跡を残すなど許さん! そこに直れい!
「それだけかって、もちろん、それだけじゃないわよっ! まだ嫁入り前なのに、どう責任取るつもりなのよっ!?」
「あ――っ、うるさいっ! 耳元でぎゃんぎゃん喚くな!」
うんざりとした表情で、はあ、と溜め息を吐いたアレクに詰め寄り、開けたシャツの胸元を引っ掴んで、ぎゃんぎゃんと喚き立てれば、圧しかかる私の身体を片手で押し退けながら、耳に突っ込んでいた指を引き抜くと、アレクは私に負けないくらい、大きな声を張り上げた。
落ちてきた雷に反射的に首を竦めれば、アレクは心底から面倒くさそうに溜め息を吐く。
前から思っていたが、どうやらアレクは溜め息を吐くのが癖のようだ。
「……っていうか、お前、何を勘違いしているんだ? 言っておくが、俺にだって選ぶ権利がある。まかり間違えても、くーかーくーかーと、いびきを掻いて爆睡するような女を抱く気にはならん。そもそも女なら他で事足りている。誰が好き好んで、お前のようなガキを抱くか」
「だっ、抱く――……っ、でっ、あだだだだだだあ――――っ!」
恥ずかしげもなく、平然と宣うアレクの刺激的な台詞に、動揺のあまり、思いっきり、舌を噛んでしまう。
涙を浮かべて悶絶していたら、アレクは額にかかっていた髪を鬱陶しそうに掻き上げると、はあ、と、これ以上ないくらい、盛大な溜め息を吐いた。
「いいか、よく聞けよ? そもそも、昨夜、俺の腕の中で眠りこけたのは、お前の方だろ? そのまま放って置くわけにもいかないから、部屋に連れ帰ってやったというのに、何で俺が怒鳴られなきゃいけないんだ!?」
「た……確かにそうかも知れないけど、それにしたって一緒に添い寝するとか、どう考えたっておかしいでしょ!? だいたいっ、アレクは騎士なんだから、騎士道精神に則って、一日ぐらい淑女かつ乙女である私にベッドを提供して、自分はソファーで寝るとか、そういう考えはなかったわけ!?」
「はあ!? よく聞こえなかったな? 誰が淑女で乙女なんだ? そんなものどこにいる?」
「どこって私に決まってるでしょ!」
「お前、“淑女”って言葉の意味を分かって言ってるのか? 少なくとも、昨夜、俺の腕の中で眠りこけていたのは“淑女”とは程遠い“じゃじゃ馬”だったと思うがな」
「って誰がじゃじゃ馬よ!」
売り言葉に買い言葉が飛び交うアレクの寝室。
いつもは無愛想で口数少ないくせに、ここぞとばかり、饒舌に毒を吐きまくるアレクに驚きつつ、両者一歩も譲らず、睨み合う。
と、その時だった。
「師団長殿! 何やら悲鳴のようなものが聞こえましたが、何かあったのですか!? それになにやら中も騒がしいような……はっ! もしやして中でなにか大事でもあったのですか!?」
どうやって中に入ってきたのか知らないが、弾けるような大声とともに、二間続きの奥の部屋である寝室のドアが、どんどんっ、と激しく叩かれる。
どうやら私が上げた悲鳴を聞いて、見張りの騎士が駆けつけたようだ。
「くっそ、お前が大きな声を出すから、見張りが騒ぎ出しただろうが!」
「ってそんなの知らないわよっ! だいたい大声出させるようなことを――……んぐうっ!?」
外にいる見張りの騎士のことなんぞ歯牙にもかけず、声を張り上げて言い返すなり、話にならんな、とでも言いたげに、ちっ、と舌を打つと、アレクはその大きな手で私の口を塞ぎにかかってきた。
「んう――っ! んぐううううう――――っ!!」
伸びてきたアレクの手を躱そうとしたが、それよりも一瞬早く、首根っこを掴まれたかと思えば、瞬きをする間もなく、アレクの大きな掌で口を塞がれてしまった。
ってなにすんだ! 放せ! このやろう!
首根っこを掴むだけでは飽き足らず、口まで塞いだアレクを睨みつけつつ、足をバタバタさせて必死に抵抗するものの。
「……って、暴れるな! そんなのだから、じゃじゃ馬って言われるんだ」
うるさ――いっ! さっきから、じゃじゃ馬、じゃじゃ馬、って何回もしつこい!
口を塞がれて何も言えないことを逆手にとって、好き放題、毒を吐きまくるアレクになんとか一矢報おうと、自由の利く足で蹴りをお見舞いしてやろうとして。
「だから暴れるなって言ってるだろ!」
そう一喝したかと思えば、背後からがっちりとロックして、私の身体を羽交い絞めにすると、あろうことか、アレクはほとんど裸に近いその胸の中に、私の顔を強引に押しつけたのだ!
賑やかに囀りながら、夜が明けたことを告げにきた小鳥たちが、嘴の先でコツコツコツと窓を叩く。どうやら餌をせがんでいるようだ。
朝、目覚めたら軒下に集まる小鳥たちに餌をやることも、毎日の日課の一つだが、昨日は厄日かと思うほどの災難に次ぐ災難に見舞われ、正直、まだもう少し眠っていたい。
ごめんね。あと一時間くらい寝たら起きるから、それまで待っていてね。
賑やか―――と言うよりは、騒々しい小鳥たちの囀りから避難しようと思って、寝返りを打った拍子に、こつり、と何かが当たった。
……ってあれ?
私こんなトコに何かぶつけるような物、置いてたっけ?
うっすらと瞼を開いた私は次の瞬間、上半身ほぼ素っ裸――正しくはシャツを着ているがほぼ開けている――で、すうすう、と寝息を立てている絶世の美形が、添い寝をするように自分の真横で眠っている姿を視界に捉え。
「ひ……ひぎゃああああああああああ!?!?」
天にも轟く大絶叫を上げていた。
私の大絶叫に驚いて、飛び起きたアレクが、枕元に置いていた剣を引っ掴む。
「どうしたっ!? 何があったんだ!?」
「な、な、な……なんでアレクが私と一緒のベッドで寝てんのよっ!?」
水槽で泳ぐ金魚がごとく、口をぱくぱくとさせて絶句していた私は、緊迫した声を張り上げたアレクを見返すと、ふるふると震える指を突きつけた。
いったい何がどうなっているのか、さっぱり理解できない。
なぜ目が覚めたら、隣に半裸のアレクがいるのよ!
とそこまで考えて、私はざざっと蒼褪めると、被っていた毛織りの掛け布を、がばっ、と引っ剥がし、自分が着ている衣服に乱れがないか慌ててチェックした。
ぱっと見た感じでは衣服を乱された形跡は見当たらない。
いやでもしかしっ、と、今度は自分の身体に何か異変は起きてないかと探ってみたものの、下腹部が妙に痛むだとか、腰がものすごく重だるく感じるだとか、変な疲労感に襲われているだとか、そういった事象もなさそうだ。
頭を過った『一夜の過ち』というゴシップ見出しが立ち消えたことに、ほう、と胸を撫で下ろしていたら、呆気に取られた表情で、こちらを見ているアレクと、がっつり目が合ってしまった。
「――……なあ、お前。もしかして、たったそれだけの事で、あのような悲鳴を上げたのか?」
目が合うなり、アレクは呆れたような口調で言って、馬鹿にしたように溜め息を吐く。
「たったそれだけのこと、じゃないわよ! アレクのばかばかばか――――っ!!」
「って、おい、こらっ! いきなり何するんだ!」
「枕で殴られて当然でしょっ!? っていうか、なんでアレクが私と一緒のベッドにいるのか説明しなさいよ!」
「……っ、このじゃじゃ馬が。いい加減にしろ!」
あまりに無遠慮なアレクの発言に、かちん、と頭にきて、手元に転がっていた枕を引っ掴んで、アレクの頭と身体をばしばしと枕で叩いていたら、反撃に転じたアレクに枕を掴む手を掴まえられた。
がっちりとホールドする指に力を籠めて、アレクが、ぎりぎりと容赦なく、手首を捻り上げる。
「い、いたいいたいいたいいたいいたい――っ! 暴力反対いいぃいいいい!!」
「先に手を出してきたのは、お前の方だろうが。で、お前が言いたいことはそれだけか?」
捻られた手首の痛さに顔を歪ませながら、掴んでいた枕を、ぽろり、と手放して降伏したものの、いつまで経っても、アレクは手を放そうとしない。
いつまで掴んでいるんだ! いい加減に離さぬか! と自由が利く方の手で、アレクの腕をぱしぱしと叩いて、離せー! と涙目ながらに訴えかければ、ようやく放してくれた。
掴まれた手首を何となしに見てみれば、アレクの指の形が、くっきりと残っているではないか!
ぐぬぬぬぬ、アレクのやつめー! 乙女の柔肌に指の跡を残すなど許さん! そこに直れい!
「それだけかって、もちろん、それだけじゃないわよっ! まだ嫁入り前なのに、どう責任取るつもりなのよっ!?」
「あ――っ、うるさいっ! 耳元でぎゃんぎゃん喚くな!」
うんざりとした表情で、はあ、と溜め息を吐いたアレクに詰め寄り、開けたシャツの胸元を引っ掴んで、ぎゃんぎゃんと喚き立てれば、圧しかかる私の身体を片手で押し退けながら、耳に突っ込んでいた指を引き抜くと、アレクは私に負けないくらい、大きな声を張り上げた。
落ちてきた雷に反射的に首を竦めれば、アレクは心底から面倒くさそうに溜め息を吐く。
前から思っていたが、どうやらアレクは溜め息を吐くのが癖のようだ。
「……っていうか、お前、何を勘違いしているんだ? 言っておくが、俺にだって選ぶ権利がある。まかり間違えても、くーかーくーかーと、いびきを掻いて爆睡するような女を抱く気にはならん。そもそも女なら他で事足りている。誰が好き好んで、お前のようなガキを抱くか」
「だっ、抱く――……っ、でっ、あだだだだだだあ――――っ!」
恥ずかしげもなく、平然と宣うアレクの刺激的な台詞に、動揺のあまり、思いっきり、舌を噛んでしまう。
涙を浮かべて悶絶していたら、アレクは額にかかっていた髪を鬱陶しそうに掻き上げると、はあ、と、これ以上ないくらい、盛大な溜め息を吐いた。
「いいか、よく聞けよ? そもそも、昨夜、俺の腕の中で眠りこけたのは、お前の方だろ? そのまま放って置くわけにもいかないから、部屋に連れ帰ってやったというのに、何で俺が怒鳴られなきゃいけないんだ!?」
「た……確かにそうかも知れないけど、それにしたって一緒に添い寝するとか、どう考えたっておかしいでしょ!? だいたいっ、アレクは騎士なんだから、騎士道精神に則って、一日ぐらい淑女かつ乙女である私にベッドを提供して、自分はソファーで寝るとか、そういう考えはなかったわけ!?」
「はあ!? よく聞こえなかったな? 誰が淑女で乙女なんだ? そんなものどこにいる?」
「どこって私に決まってるでしょ!」
「お前、“淑女”って言葉の意味を分かって言ってるのか? 少なくとも、昨夜、俺の腕の中で眠りこけていたのは“淑女”とは程遠い“じゃじゃ馬”だったと思うがな」
「って誰がじゃじゃ馬よ!」
売り言葉に買い言葉が飛び交うアレクの寝室。
いつもは無愛想で口数少ないくせに、ここぞとばかり、饒舌に毒を吐きまくるアレクに驚きつつ、両者一歩も譲らず、睨み合う。
と、その時だった。
「師団長殿! 何やら悲鳴のようなものが聞こえましたが、何かあったのですか!? それになにやら中も騒がしいような……はっ! もしやして中でなにか大事でもあったのですか!?」
どうやって中に入ってきたのか知らないが、弾けるような大声とともに、二間続きの奥の部屋である寝室のドアが、どんどんっ、と激しく叩かれる。
どうやら私が上げた悲鳴を聞いて、見張りの騎士が駆けつけたようだ。
「くっそ、お前が大きな声を出すから、見張りが騒ぎ出しただろうが!」
「ってそんなの知らないわよっ! だいたい大声出させるようなことを――……んぐうっ!?」
外にいる見張りの騎士のことなんぞ歯牙にもかけず、声を張り上げて言い返すなり、話にならんな、とでも言いたげに、ちっ、と舌を打つと、アレクはその大きな手で私の口を塞ぎにかかってきた。
「んう――っ! んぐううううう――――っ!!」
伸びてきたアレクの手を躱そうとしたが、それよりも一瞬早く、首根っこを掴まれたかと思えば、瞬きをする間もなく、アレクの大きな掌で口を塞がれてしまった。
ってなにすんだ! 放せ! このやろう!
首根っこを掴むだけでは飽き足らず、口まで塞いだアレクを睨みつけつつ、足をバタバタさせて必死に抵抗するものの。
「……って、暴れるな! そんなのだから、じゃじゃ馬って言われるんだ」
うるさ――いっ! さっきから、じゃじゃ馬、じゃじゃ馬、って何回もしつこい!
口を塞がれて何も言えないことを逆手にとって、好き放題、毒を吐きまくるアレクになんとか一矢報おうと、自由の利く足で蹴りをお見舞いしてやろうとして。
「だから暴れるなって言ってるだろ!」
そう一喝したかと思えば、背後からがっちりとロックして、私の身体を羽交い絞めにすると、あろうことか、アレクはほとんど裸に近いその胸の中に、私の顔を強引に押しつけたのだ!