敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です
「だってマスタード色だよ」

 目を丸くする成美。

「やば……先輩その歳でオヤジギャグ?チーフといる時間が多くてうつったんじゃありません?」

「確かに……辛口批評を受けすぎて、全身がマスタード色になっているかもね」

「誰が辛口だって?」

「ひぃっ!」

 成美は口を押さえて青くなった。目線は雪を通り過ぎて少し上を見ている。

 つまり、雪の真後ろに怖い人が現れたらしい。

「誰かさんが甘ったるい文章ばかりを俺に見せるから、マスタードを塗りこんでやってるんだ」

「……すみません……」

「……ふたりでくだらない話をする暇があるのか?下調べ増やしてやるよ」

 成美はガタンと音を立てて立ち上がった。

「いいえ、まだ頼まれたファイルも終わってませんから大丈夫です」

 彼女は逃げるように背中を向け自分の席へ戻った。取り残された雪は怖い人と目が合った。

「……えっとですね、あの……」

「マスタードの誰かさんは原稿上がったのか?」

「あの……まだ途中です」

 ジロリと私達を睨んでいなくなった。

「はあ……」「ふう……」

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