敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です
「ありがとうございます、それだけでいいです!雪先輩大好き!」

 雪は自分の原稿を放り出して成美にアドバイスをした。

 それがまさかこんなことになるとは思ってもみなかったのだ。

 * * *

 翌日の朝のことだった。

 例の原稿をチーフに見せていた成美が打ち合わせ室から出てきた。

 部長も入って確認していたようだった。

 出てきた彼女は真っ青だ。雪は彼女の具合が悪いのかと心配した。

 ところが彼女はこちらに早足で近づいてきた。

「どうしたの、顔色が悪いけど気分でも悪いの?例の原稿のOKは出た?」

「出ました。出ましたけど……」

 すると、ドアがバタンと音を立てて開いた。低いフロアによく通る声が聞こえてきた。

「佐山。ちょっと来い」

 皆、そのトーンの声を聞いただけで雪の方を窺うように見た。いつもより低い声だ。
 
 雪はとるものもとりあえず、作業中だったがすぐに返事をした。

「……はい」

 雪に憐れみの目が注がれた。皆が知るところの低気圧。注意報発令。

 つまり、声の主である高原チーフが怒っている。雪の運命は決まった。

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