敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です
 パチパチバンバンといつもより力強いパソコンの入力の音がしばらく続いた。

 仕事を先に片付けようとしている。つまり、片手間に怒るわけじゃないとわかる。

 その音だけでこれはまずいなと被告人の雪はこの後の判決の重さを覚悟した。

 入力の音が止まった。ようやく高原が顔をあげた。

 さらりとした前髪は伸びてきていて、彼の目を隠した。

 すると、彼は無造作にその髪をかきあげた。

 そんな仕草を何度も見ているのに、また目を奪われた。

 雪でさえ色気があると思うんだから、彼の本性を知らない取材対象の女性が、まずは皆彼の虜になるのもわかる。

 整った鼻筋と大きな目がこちらを見た。

 今日は目の下に隈が見える。また徹夜だったんだろう。

「ふー……」

 首を横に回している。記事を書いていて疲れた時のルーティーンだ。

 そしていよいよ雪を正面から見た。二重の大きな目が少し細くなった。

 来る……久しぶりに雨雲が頭上に乗ったことを雪は認識した。身構えた。

「佐山。林の原稿を見た。しかし、佐山もいい度胸だな。あいつのゴーストライターにでもなったか?」

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