敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です
「インタビュー原稿の推敲をしていただく予定でしたよね」

「そういえば、そうだったな……悪い……」

「夕方からずっといらっしゃらなかったですけど、どちらへ行ってらしたんです?」

 そのイケメンは眉間にしわを寄せたまま、だ。

 コートを彼に返した。

「ああ、よく寝ていたな。うらやましいご身分だ」

「起こしてくださればよかったのに……」

「パソコンを自動で落ちるようにしておいてよかったな」

 意地悪な目で見ている。くうう。負けない。

「背広を着てカバンを置いて行ったということは上ですか?」

 指で矢印を上に向けた。

 ため息をつきながら、椅子を回してこちらを見た。

「ああ最悪だった。疲れたよ」

 何があったんですかとは聞かない。様子を見るにあまりいい話じゃない。

「お腹がすいたから食べながら見て頂いてもいいですか?一応、予約しておきました」

「相変わらず、眠気と食い気だけは立派だ。嫌な話ばかりでうな重を食べ損ねた」

「えー、もったいない」

「味が悪くなる食事はしないことにしている」

 雪はにっこりと笑った。

「私の原稿は美味しい食事になりますよ」

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