敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です
「はは……それはどうだろう……よし、行くか」

「はい!」

 雪は高原と一緒に社屋を出た。

 行くところは決まっている。

 食事をしながら、打ち合わせのできる近所の小料理屋『暖炉』だ。
 
 『暖炉』は小料理屋といっても、懐石料理も出すれっきとした日本料理の店でもある。

 綺麗な女将が迎えてくれた。

「いらっしゃいませ。佐山様、高原様。お待ちしておりました」

 奥の小さな二部屋を会社が年単位で借り切っている。

 取材はここを使うことが多い。

 もちろん接待だけでなく、打ち合わせや忘年会など会社で使っているのだ。

 お互いお腹がすいていて集中して食べた。

 食べ終わるころになってようやく原稿を出した。

「それで、こんな感じでいかがでしょう?」

 氷室商事、新副社長へのインタビュー最終稿だ。

「ああ、ちょっと見るから食べてろ。お詫びにこの厚焼き玉子は全部食べていいぞ」

「全部って……あと三切れしかないのに?」

「そこのシーザーサラダ食べてもいいぞ」

 サラダもあと二口くらいしか残ってない。残飯整理?

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