敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です
『小西は自慢の部下だ。佐山はまだ自慢の部下にもなってない』

 悲しそうな佐山の目が忘れられない。あの頃は自分の為にもそう答えるしかできなかったのだ。

 恋愛は今の仕事に不向きだと就職して数年で理解した。好きな奴を泣かせたくない。

 気づいてからは、特定の人は作らず、ひとりを貫いてきた。

 恰好いいように聞こえるが、ただの逃げでしかない。向き合うのが怖かった。

 向き合うべき時は近い。

 * * *

 ひと月前、佐貫部長から氷室商事の後任について相談を受けていた。

「どうだろう。お前のためにも海江田でいこうとおもうんだが……」

「できれば海江田ではなく、佐山にして頂けませんか?彼女の方が実績もあり適任です」

 佐貫部長は驚いたのか、息を飲んだ。

「これは驚いたな。絶対佐山を選ぶことを反対すると思っていた」

「受賞記事も佐山がいてこそ書けたと言えるのでご褒美に推薦します」

「お前の愛弟子だ。佐山のことは社長も褒めている。記事の視点が本当にいい」

「そうですね」

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