敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です
「何かあったら教えてくれ。氷室商事のインタビュー原稿、佐山の指導も頼む」

「了解です」

 晴海商事の担当になって十年。駆け出しの俺を晴海の元会長が気に入ってくれて今がある。

 毎年、二大商社の決算や予算を見比べてきた。今年の分を作ってすぐに気づいた。

 来期の晴海商事の予算がおかしい。間違いかもしれないと調査を依頼した。

 ところが、調査後の晴海担当者の返事は歯切れが悪かった。

 長年の勘でピンときた。何か隠している。

 氷室商事担当の佐貫部長にはすぐ報告した。

「どうする気だ?」

「晴海には恩があります。裏で手を回して自浄努力を促します」

「どうやって?」

「お台場でタッグを組む方からやらせるんです」

「まさか、氷室君に教えるのか?まずいだろう」

「教えるんじゃなくて、参考資料を提供して出方を見るんです」

「出方を見る?」

「氷室が気づかなければ、それで諦めます。だが、あいつなら気づくはず」

「なるほど。気づいたら、彼があちらへ確認するというわけだな」

「そういうことです。プロジェクトの為、氷室は表沙汰にしないでしょう」

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