敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です
 カバンを置いて、急いで役員室へ向かった。

「社長、遅くなりすみません」

「ああ、忙しいのに悪いな。かけてくれ」

「透。厄介なことになった。コレが送られてきた」

 社長は父の親友。俺が学生時代からよく知っている。名前で呼ぶのは昔からだ。

『EFR 狼殿 晴海商事の来季予算について記事にするな。約束を破った時は相応の罰を与える』

 所謂、脅迫文という奴だ。俺はそれを受け取り、一瞥して一口ウナギを食べた。

 全く美味しく感じない。箸をおいた。

「久しぶりにこういうのを見ました。晴海のアレは黒。勘が当たりました」

「おい、絶対記事にするなよ」

「まあ、大丈夫です」

「何が大丈夫だ。お前のことは親父さんからも頼まれてる。何かあったら……」

「大丈夫です。何かあればまた俺の怪我は父が治してくれます。死にませんよ」

「ふざけるな、透!」

 俺の父は医師だ。小さい頃は多くの人を救う父に憧れ、純粋に跡を継ぎたいと目標にしていた。

 医大を受験するため勉強も頑張っていた。

 父は人を疑うことをあまりしない真面目な医者だった。

 
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