洗濯物をぶつけたら皇太子の溺愛が始まりました
そしてまた別な日。

午後になって、風が少しずつ強くなってきた。

干したばかりのシーツが、ばさり、ばさりと大きく揺れる。

「あ……シーツ、飛んでしまう」

私は慌てて手を伸ばし、端を押さえた。

濡れた布は重いのに、それでも風に煽られて浮き上がろうとする。

急いで、木枠に固定するためのピンを取り出す。

「もう少し……ここも」

指先で布を引き寄せながら、一つずつ留めていく。

その時、背後から笑い声がした。

「いつまでシーツに飛びついてるの、フィアナ」

振り返ると、同僚がくすくす笑っている。

「もう少し。飛ばされそうだから」

そう言いながらも、私もつい笑ってしまう。

こんな何気ない時間が、少しだけ楽しい。

風に翻弄されながら、布と格闘するのも、悪くない――なんて思っていた、その時だった。

びゅう、と強い風が吹き抜ける。
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