洗濯物をぶつけたら皇太子の溺愛が始まりました
白いシーツを、ゆっくりと持ち上げる手。

その動きは、なぜか落ち着いていて――

怒りの気配は、どこにも感じられなかった。

「……これ、洗濯物?」

低く、静かな声。

私ははっとして、さらに深く頭を下げる。

「は、はい……!風に飛ばされてしまいました……!」

声が震える。

どうしても、顔を上げられない。

「ま、まさか……皇太子様のお顔に当たるなんて……」

言いながら、自分でも信じられない。

よりによって、この方に。

この国で一番高い場所にいる人に。

「本当に……申し訳ございません……!」

膝をつく。

石畳の冷たさが、じんわりと伝わる。

これから叱責されるのか、それとも――

そこまで考えた、その時だった。

「……はは」

聞こえたのは、意外な音だった。

一瞬、耳を疑う。
< 13 / 24 >

この作品をシェア

pagetop