洗濯物をぶつけたら皇太子の溺愛が始まりました
風に揺れるシーツを押さえながら、私は次の布に手を伸ばした。

少しでも早く終わらせたい。

ルークレイン様が近くにいるこの状況に、どうしても慣れないから。

指先に力を込めた、その時だった。

「……フィアナ」

名前を呼ばれる。

びくり、と肩が揺れる。

「は、はい……」

振り向こうとした、その瞬間――

手を、取られた。

「え……」

驚いて視線を落とす。

自分の手を包む、大きな手。

逃げる暇もなかった。

「……荒れているな」

低い声が、静かに落ちる。

その言葉に、胸がきゅっと縮む。

「……あ」

思わず、自分の手を見つめる。

水に浸かり続けた指先。

少し赤くなり、ところどころひび割れている。

毎日の仕事で、当たり前のこと。

気にしたことなんて、なかったのに。

「毎日、水仕事をしているので……」

言い訳のように、そう答える。
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