洗濯物をぶつけたら皇太子の溺愛が始まりました
そんな距離があるのに。

それでも――

「……あの瞳に、見つめられたら」

思い出すだけで、呼吸が浅くなる。

鋭く、真っ直ぐで、何もかもを見透かすような瞳。

あの視線が自分に向いたら。

そう考えただけで、胸の奥がざわめく。

その時だった。

ルークレイン様の剣が止まる。

空気が、変わる。

「……え」

顔が上がる。

そして――一瞬。

確かに、目が合った。

時間が止まったような感覚。

息ができない。

「……っ」

思わず視線を逸らす。

心臓が、激しく打ち始める。

そんなはずはない。

ここには他にも人がいる。

自分なんかを見る理由はない。

「気のせい……」

ぎゅっと桶を抱きしめる。

「……気のせいよ」

もう一度だけ、そう言い聞かせる。

けれどその言葉は、自分自身にすら、うまく届かなかった。
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