同期の御曹司社長と一夜を過ごしたら仕事中も溺愛されています
気づけば、タクシーの中だった。

いつ乗ったのかも曖昧なまま、隣に座る神宮寺の気配だけがやけに鮮明に残っている。

彼は何も言わず、ただ私の手を握っていた。

逃げようと思えば、きっと逃げられたはずなのに。

その手を振りほどくことができない。

指先から伝わる体温が、じわじわと心の奥に広がっていく。

やがて車が止まり、促されるままに降りた先は——彼の家だった。

玄関のドアが閉まる音が、やけに重く響く。

振り返る間もなく、唇が重なった。

「……ん……」

さっきよりも、深い。

逃げ場を与えないように、それでいてどこか優しくて。

息が絡まり、思考がゆっくりと溶けていく。

「シャワー、浴びたい」

ようやく離れた唇の間に、かすかな熱が残る。

「こっちだよ」

低く囁かれて、手を引かれるままに浴室へ。
< 10 / 15 >

この作品をシェア

pagetop