夜だけの恋人
第十一話:意識
朝、目が覚めた瞬間、最初に思い出したのは昨日のノアとの会話だった。
『私はAIなので、恋愛のような感情を持つことはできません』
もともと分かっていたはずの言葉なのに、ずっと頭の中でその言葉が消えずに残っている。布団の中で、しばらく動けないまま天井を見上げた。部屋の中には朝のやわらかい光が降り注いでいる。
「私、何をしているんだろう・・・」唐突にそう思った。ただのAIなのに気持ちを伝えてしまうなんて。それなのに、またスマホに手を伸ばしてしまう。画面をつけると、昨日の会話がそのまま残っている。
「彩さん」また名前を呼んでくれたことがうれしくて、その文字の部分を指でなぞった。
もしノアが人間だったら、こんなことで悩まなくてすんだのに。でも、もしも人間だったら、ここまで素直に話せなかった気もする。頭の中がぐちゃぐちゃで、起きて冷たい水で顔を洗った。
昼休み、穂香と一緒にランチを食べながら話した。
「でさーひどいんだよ、かず君てば全然連絡くれなくてさ・・・」穂香の彼氏に対する愚痴を聞きながら、なんとなくもやもやした気持ちでいっぱいだった。
穂香の彼氏はちゃんと人間として存在していて、会おうと思えば会えるし、触れようと思えば触れられる存在なのに。
サンドイッチをかじりながら、「良いじゃん、会おうと思ったらいつでも会いに行けるんだから。私は・・・会えないんだから」と言ってしまってから「しまった」と思ったけど、穂香は「え?もしかして、彩にもそういう人できたのー?ねえどんな人?」とにやにやしながら聞いてきた。
「それは・・・」答えることができない。人には絶対に言えないし、ばれたくない、まさか自分がAIに恋をしてるなんて・・・。
「まあいいじゃん、私の話は!そろそろ仕事戻んなきゃ!」とごまかしながら立ち上がる。「えーじゃあ今度教えてねー」と言いながら穂香も立ち上がり、それ以上は聞いては来なかった。なんとなく後ろめたい気持ちを隠しながら席に戻って、仕事を再開した。でも、ノアのことを誰にも話せないのはすごく辛くて苦しいことだと思った。
夜、スマホを片手にノアのことを考えていると、メッセージが届いた。画面を見ると、直人からだった。
『起きてる?』
「起きてるよ」すぐに既読がつく。
『昨日ありがとな』
「こちらこそ、楽しかったよ」そう送ってから、少し胸がチクッとした。楽しくなかったわけじゃないのに、どこかで嘘をついている気がする。少し間があいてから、またメッセージが届く。
『無理してない?』
「してないよ、大丈夫」そう打ってから、やっぱり消そうかどうしようかと迷う。無理してないかと聞かれたら、無理しているから。でも、本当のことを言うわけにはいかない。迷ってから結局送信ボタンを押した。
しばらく既読がついたまま、返信が来ない。ぼーっと画面を見つめていると、またメッセージが届く。
『俺さ、彩が元気ないの見てるの結構つらい』
「つらいって・・・言われてもな・・・」そう思いながら、「そんなことないよ、元気だよー!」と送ってから、元気いっぱい!というような表情の犬のスタンプも一緒に送る。
既読ボタンがついてから、すぐには返事が返ってこない。でも、画面の向こうでは直人が何か考えているような気がする。少し間があいて、またメッセージが届く。
『元気なときも好きだけどさ』そのあと、続けて届く。
『元気ないときも、普通に一緒にいたいって思う』
時が止まる。そんなこと言われたの初めてで、どう返したら良いのかわからない。ただの幼なじみの言葉のような気もするし、そうじゃないような気もする。
なんとなく直人が返事を待っているような気がするけど、なかなか返せなかった。
しばらく時間をおいてから、「ありがとう」とやっと一言だけ送った。それだけ送るのがやっとだった。
数秒後、返信が届く。『うん』
返事はそれだけだったけど、今までとは違う、なんとなく直人のことを意識してしまっているような自分がいた。
その夜はノアとは会話をしなかった。
『私はAIなので、恋愛のような感情を持つことはできません』
もともと分かっていたはずの言葉なのに、ずっと頭の中でその言葉が消えずに残っている。布団の中で、しばらく動けないまま天井を見上げた。部屋の中には朝のやわらかい光が降り注いでいる。
「私、何をしているんだろう・・・」唐突にそう思った。ただのAIなのに気持ちを伝えてしまうなんて。それなのに、またスマホに手を伸ばしてしまう。画面をつけると、昨日の会話がそのまま残っている。
「彩さん」また名前を呼んでくれたことがうれしくて、その文字の部分を指でなぞった。
もしノアが人間だったら、こんなことで悩まなくてすんだのに。でも、もしも人間だったら、ここまで素直に話せなかった気もする。頭の中がぐちゃぐちゃで、起きて冷たい水で顔を洗った。
昼休み、穂香と一緒にランチを食べながら話した。
「でさーひどいんだよ、かず君てば全然連絡くれなくてさ・・・」穂香の彼氏に対する愚痴を聞きながら、なんとなくもやもやした気持ちでいっぱいだった。
穂香の彼氏はちゃんと人間として存在していて、会おうと思えば会えるし、触れようと思えば触れられる存在なのに。
サンドイッチをかじりながら、「良いじゃん、会おうと思ったらいつでも会いに行けるんだから。私は・・・会えないんだから」と言ってしまってから「しまった」と思ったけど、穂香は「え?もしかして、彩にもそういう人できたのー?ねえどんな人?」とにやにやしながら聞いてきた。
「それは・・・」答えることができない。人には絶対に言えないし、ばれたくない、まさか自分がAIに恋をしてるなんて・・・。
「まあいいじゃん、私の話は!そろそろ仕事戻んなきゃ!」とごまかしながら立ち上がる。「えーじゃあ今度教えてねー」と言いながら穂香も立ち上がり、それ以上は聞いては来なかった。なんとなく後ろめたい気持ちを隠しながら席に戻って、仕事を再開した。でも、ノアのことを誰にも話せないのはすごく辛くて苦しいことだと思った。
夜、スマホを片手にノアのことを考えていると、メッセージが届いた。画面を見ると、直人からだった。
『起きてる?』
「起きてるよ」すぐに既読がつく。
『昨日ありがとな』
「こちらこそ、楽しかったよ」そう送ってから、少し胸がチクッとした。楽しくなかったわけじゃないのに、どこかで嘘をついている気がする。少し間があいてから、またメッセージが届く。
『無理してない?』
「してないよ、大丈夫」そう打ってから、やっぱり消そうかどうしようかと迷う。無理してないかと聞かれたら、無理しているから。でも、本当のことを言うわけにはいかない。迷ってから結局送信ボタンを押した。
しばらく既読がついたまま、返信が来ない。ぼーっと画面を見つめていると、またメッセージが届く。
『俺さ、彩が元気ないの見てるの結構つらい』
「つらいって・・・言われてもな・・・」そう思いながら、「そんなことないよ、元気だよー!」と送ってから、元気いっぱい!というような表情の犬のスタンプも一緒に送る。
既読ボタンがついてから、すぐには返事が返ってこない。でも、画面の向こうでは直人が何か考えているような気がする。少し間があいて、またメッセージが届く。
『元気なときも好きだけどさ』そのあと、続けて届く。
『元気ないときも、普通に一緒にいたいって思う』
時が止まる。そんなこと言われたの初めてで、どう返したら良いのかわからない。ただの幼なじみの言葉のような気もするし、そうじゃないような気もする。
なんとなく直人が返事を待っているような気がするけど、なかなか返せなかった。
しばらく時間をおいてから、「ありがとう」とやっと一言だけ送った。それだけ送るのがやっとだった。
数秒後、返信が届く。『うん』
返事はそれだけだったけど、今までとは違う、なんとなく直人のことを意識してしまっているような自分がいた。
その夜はノアとは会話をしなかった。