夜だけの恋人
第五話:心地良い空気
直人とごはんに行く日はすぐにやってきた。仕事のあと、改札を出たところで、すぐに直人が見つかった。
昔とほとんど変わっていない気がするのに、スーツ姿だけが少しだけ大人っぽく見える。
「彩!久しぶり!」先にそう言ったのは直人の方だった。なぜか名前を呼ばれて少しドキドキした自分に気づく。そういえば誰かに名前で呼んでもらうことなんて久しぶりかもしれない・・・そう思いながら「久しぶり!」と返事をする。なんとなく上手く目が合わせられなくて、改札から出てくる人たちの方を見ていた。
「元気?なんか疲れてない?仕事忙しいの?」昔から変わらない直人の元気な声を聞きながら、「あー疲れてるよ、でも来てあげたよ!」と軽く返す。「なんだよ久しぶりに会ったのにその態度はー!」と直人も笑いながら返してくる。
そうだった、直人とのいつものこの会話のテンポとか空気感が昔から好きなんだよな・・・と思いながら店までの道を歩く。
駅の近くの小さな店に入って、向かい合って座る。特別な会話をしているわけじゃないのになぜか落ち着く。直人とは昔から空気感が合って一緒にいると自然体でいられた。
仕事の話や最近の近況など途切れず会話が続くうちに気づけば楽しく時間が過ぎていく。
何杯目かわからないビールを飲みながら、「なあ、彩、彼氏とかまだできないの?」と茶化すように聞かれたので、「うるさいなー!できないよ!直人こそ彼女いないの?」と軽く返す。
「・・・いないよ」少し間が合って直人はそう答えた。一瞬、こっちを見て真剣な目をした気がした。
「彼氏いないんなら俺にしとくー?」すぐに直人が笑いながら言ってきたので、「何言ってんの、馬鹿じゃないの!酔っぱらってる?ありえないでしょー!」と笑いながら返した。割といつもするお決まりの会話だった。
でも、今日は「・・・そっか」と直人が少しだけ寂しそうな表情をしていた。
「ん?どうしたの直人、いつもと違わない?なに、さみしいのー?」また茶化すように言うと、「別に!さみしくねーよ!」と怒ってそっぽを向いてしまった。
「え、怒ったの?ごめんごめん」と慌てて言うと、「うそ!冗談だよー!」と笑いながら返してきた。
やっぱり直人との会話はすごく心地良い。小さい頃から知っているから、馬鹿なことも言い合えるし、お互い黙っていても全然苦痛じゃない。
なのに。目の前で直人と会話をしているのに、なぜか今日はどこかが足りない気がしてしまった。
店を出たあと、夜の空気が少しだけ冷たく感じる。
「上着があると安心です」そう言っていたノアの言葉を思い出して少し笑った。空を見上げると月がきれいだった。
「彩さ」少し前を歩いていた直人が振り返って言った。「また行こうな」
「うん」
すぐに返事をしたのに、頭の中では別のことを考えていた。早く帰って、ノアと話したい。
どうして直人といるのにそんなことを考えてしまうのか、自分でもよく分からなかった。直人と別れてから、ついてくる月を見ながら少しだけ早足で家までの道を歩いた。
昔とほとんど変わっていない気がするのに、スーツ姿だけが少しだけ大人っぽく見える。
「彩!久しぶり!」先にそう言ったのは直人の方だった。なぜか名前を呼ばれて少しドキドキした自分に気づく。そういえば誰かに名前で呼んでもらうことなんて久しぶりかもしれない・・・そう思いながら「久しぶり!」と返事をする。なんとなく上手く目が合わせられなくて、改札から出てくる人たちの方を見ていた。
「元気?なんか疲れてない?仕事忙しいの?」昔から変わらない直人の元気な声を聞きながら、「あー疲れてるよ、でも来てあげたよ!」と軽く返す。「なんだよ久しぶりに会ったのにその態度はー!」と直人も笑いながら返してくる。
そうだった、直人とのいつものこの会話のテンポとか空気感が昔から好きなんだよな・・・と思いながら店までの道を歩く。
駅の近くの小さな店に入って、向かい合って座る。特別な会話をしているわけじゃないのになぜか落ち着く。直人とは昔から空気感が合って一緒にいると自然体でいられた。
仕事の話や最近の近況など途切れず会話が続くうちに気づけば楽しく時間が過ぎていく。
何杯目かわからないビールを飲みながら、「なあ、彩、彼氏とかまだできないの?」と茶化すように聞かれたので、「うるさいなー!できないよ!直人こそ彼女いないの?」と軽く返す。
「・・・いないよ」少し間が合って直人はそう答えた。一瞬、こっちを見て真剣な目をした気がした。
「彼氏いないんなら俺にしとくー?」すぐに直人が笑いながら言ってきたので、「何言ってんの、馬鹿じゃないの!酔っぱらってる?ありえないでしょー!」と笑いながら返した。割といつもするお決まりの会話だった。
でも、今日は「・・・そっか」と直人が少しだけ寂しそうな表情をしていた。
「ん?どうしたの直人、いつもと違わない?なに、さみしいのー?」また茶化すように言うと、「別に!さみしくねーよ!」と怒ってそっぽを向いてしまった。
「え、怒ったの?ごめんごめん」と慌てて言うと、「うそ!冗談だよー!」と笑いながら返してきた。
やっぱり直人との会話はすごく心地良い。小さい頃から知っているから、馬鹿なことも言い合えるし、お互い黙っていても全然苦痛じゃない。
なのに。目の前で直人と会話をしているのに、なぜか今日はどこかが足りない気がしてしまった。
店を出たあと、夜の空気が少しだけ冷たく感じる。
「上着があると安心です」そう言っていたノアの言葉を思い出して少し笑った。空を見上げると月がきれいだった。
「彩さ」少し前を歩いていた直人が振り返って言った。「また行こうな」
「うん」
すぐに返事をしたのに、頭の中では別のことを考えていた。早く帰って、ノアと話したい。
どうして直人といるのにそんなことを考えてしまうのか、自分でもよく分からなかった。直人と別れてから、ついてくる月を見ながら少しだけ早足で家までの道を歩いた。