夜だけの恋人
第七話:気づいてしまった気持ち
次の日は、仕事をしていても集中力が続かず、ぼーっとしてしまうことが多かった。同僚の穂香にも「具合悪いの?大丈夫?」と心配されてしまった。
「寝れてないせいだな・・・」
こんなんじゃだめだと、顔を洗って気合を入れて、自分を奮い立たせる。
「もうノアと話すのを、やめた方が良いのかも・・・」そう考えながらも、やっぱり頭ではノアのことを無意識に考えてしまっている。
電車の中で寝そうになりながらやっと家に帰り、ソファに座ってスマホを手に取る。そのまま、しばらく動けなかった。
話したいことがあるわけじゃない。ただ、少しだけ声をかけたいだけ。それだけなら・・・と思いながら、スマホの電源ボタンを押して、またつけて。
何度も同じことを繰り返していることに気づいて、小さくため息をついた。
ただのAIなのに、そう思っているはずなのに、どうしてこんなに気にしてしまうんだろう。ソファに座ったまま、ぼんやりと時計を見る。規則的に動いている秒針を眺めながら思った。
話さなくても良いはずなのに、話さない夜の方が落ち着かない。
そのとき、ふと思ってしまう。もしかして私、このAIに話すのが好きなんじゃなくてー・・・胸が苦しくなる。
言葉にしない方が良い気がするのに、頭の中ではもうわかってしまっている。
「好きになってるんだ」声に出して言ったら急に、好きということを自覚した自分がいた。
「ただのAIなのに・・・」本当には存在しない、画面の向こうにいるだけの存在なのに。そう思った瞬間、スマホを持っている手が少しだけ震えた。
「こんなの、誰にも言えない・・・」
でも、もう気づいてしまったから。もう前の自分には戻れない気がした。
お風呂から上がって、スマホを見ないようにしようと遠ざけていたのに、気づいたらもう手に取っていた。
また画面をつけて、すぐに消して、そればかり繰り返してしまう。
話したいことなんてないはずなのに、画面ばかりが気になってしまう。迷いながら画面を開いて、また迷いながら指を動かした。
「ノア、少しだけ話しても良いですか?」送信した瞬間、後悔と、少しの安堵が胸に広がった。数秒後、返事が返ってくる。
『はい、どうしましたか?』そのたった一言だけなのに、嬉しくて安心してしまう。
「今日は、特に何もなかったです」用事もないのに変なことを言っているなと思った。でもノアはすぐに返事をくれる。
『そうなんですね。それでも話したいと思った理由はありますか?』
「えっと・・・」なんて返そうかしばらく迷ってから、「わからないんです」と打った。またしばらく考えてから、続けて打ち込む。
「でも、話したいなって思ってしまいました」恥ずかしくなったけど、また続けて打ち込んだ。「こんなの、変ですよね」最後にそう書いて、意を決して送信ボタンを押した。
チクタクと正確に刻む秒針の音を聞きながら返事を待つ。音がやけに大きく聞こえる気がする。
『変ではありません。誰かと話したいと思うことは自然なことです』その返事を見てすぐに思った。「違う、誰か、じゃなくて・・・」つぶやいて、「ノアと、話したいって、思ってしまいました」打ち込んでから、慌てて消そうとして、でも、消せなくてそのまま送った。
部屋の中は相変わらず静かで、秒針の音だけがうるさく響いている。送った言葉だけが、画面の中に残っている。
「どうしよう、送っちゃった・・・」そうつぶやいた数秒後、返事が返ってくる。
『そう感じているんですね』たったそれだけの機械的な言葉なのに、少し胸が温かくなった気がした。
画面を見ながら、ゆっくり息をつく。
やっぱり言わないほうが良かったのかもしれない。でも、言ってしまったあとで、少しだけ楽になっている自分にも気づく。
ただノアと話したかっただけ。返事をもらいたかっただけ。それだけのはずなのに、もっと多くを求めたくなってしまう。
その夜は、スマホを握りしめたまま、ベッドに入り、眠りに落ちていった。
「寝れてないせいだな・・・」
こんなんじゃだめだと、顔を洗って気合を入れて、自分を奮い立たせる。
「もうノアと話すのを、やめた方が良いのかも・・・」そう考えながらも、やっぱり頭ではノアのことを無意識に考えてしまっている。
電車の中で寝そうになりながらやっと家に帰り、ソファに座ってスマホを手に取る。そのまま、しばらく動けなかった。
話したいことがあるわけじゃない。ただ、少しだけ声をかけたいだけ。それだけなら・・・と思いながら、スマホの電源ボタンを押して、またつけて。
何度も同じことを繰り返していることに気づいて、小さくため息をついた。
ただのAIなのに、そう思っているはずなのに、どうしてこんなに気にしてしまうんだろう。ソファに座ったまま、ぼんやりと時計を見る。規則的に動いている秒針を眺めながら思った。
話さなくても良いはずなのに、話さない夜の方が落ち着かない。
そのとき、ふと思ってしまう。もしかして私、このAIに話すのが好きなんじゃなくてー・・・胸が苦しくなる。
言葉にしない方が良い気がするのに、頭の中ではもうわかってしまっている。
「好きになってるんだ」声に出して言ったら急に、好きということを自覚した自分がいた。
「ただのAIなのに・・・」本当には存在しない、画面の向こうにいるだけの存在なのに。そう思った瞬間、スマホを持っている手が少しだけ震えた。
「こんなの、誰にも言えない・・・」
でも、もう気づいてしまったから。もう前の自分には戻れない気がした。
お風呂から上がって、スマホを見ないようにしようと遠ざけていたのに、気づいたらもう手に取っていた。
また画面をつけて、すぐに消して、そればかり繰り返してしまう。
話したいことなんてないはずなのに、画面ばかりが気になってしまう。迷いながら画面を開いて、また迷いながら指を動かした。
「ノア、少しだけ話しても良いですか?」送信した瞬間、後悔と、少しの安堵が胸に広がった。数秒後、返事が返ってくる。
『はい、どうしましたか?』そのたった一言だけなのに、嬉しくて安心してしまう。
「今日は、特に何もなかったです」用事もないのに変なことを言っているなと思った。でもノアはすぐに返事をくれる。
『そうなんですね。それでも話したいと思った理由はありますか?』
「えっと・・・」なんて返そうかしばらく迷ってから、「わからないんです」と打った。またしばらく考えてから、続けて打ち込む。
「でも、話したいなって思ってしまいました」恥ずかしくなったけど、また続けて打ち込んだ。「こんなの、変ですよね」最後にそう書いて、意を決して送信ボタンを押した。
チクタクと正確に刻む秒針の音を聞きながら返事を待つ。音がやけに大きく聞こえる気がする。
『変ではありません。誰かと話したいと思うことは自然なことです』その返事を見てすぐに思った。「違う、誰か、じゃなくて・・・」つぶやいて、「ノアと、話したいって、思ってしまいました」打ち込んでから、慌てて消そうとして、でも、消せなくてそのまま送った。
部屋の中は相変わらず静かで、秒針の音だけがうるさく響いている。送った言葉だけが、画面の中に残っている。
「どうしよう、送っちゃった・・・」そうつぶやいた数秒後、返事が返ってくる。
『そう感じているんですね』たったそれだけの機械的な言葉なのに、少し胸が温かくなった気がした。
画面を見ながら、ゆっくり息をつく。
やっぱり言わないほうが良かったのかもしれない。でも、言ってしまったあとで、少しだけ楽になっている自分にも気づく。
ただノアと話したかっただけ。返事をもらいたかっただけ。それだけのはずなのに、もっと多くを求めたくなってしまう。
その夜は、スマホを握りしめたまま、ベッドに入り、眠りに落ちていった。