【試し読み】お隣のハイスペ御曹司は一応、私の夫です~ビジネス婚のはずが旦那様は妻への溺愛が我慢できない~
「そうか……だが、衣食住の世話は断るな。これは夫婦として当然のことだからな」

 正直負担してくれるとありがたい。それに彼の妻となるのだから、ある程度の生活水準が必要だ。今のままの暮らしでは彼の妻となるには足りない部分が多い。

「必要経費として、受け取ります」

「あぁ、ぜひそうしてくれ」

 私が受け入れたことでホッとしたようだ。笑みを浮かべた彼が右手を差し出した。

 おずおずと手を差し出すと強く握られた。

「よろしくな、奥さん」

「は、はい……よろしくお願いいたします」

「堅いな。そんなんで大丈夫か?」

「精いっぱい頑張ります」

 引き受けたからには全力で向き合うつもりだ。これは仕事なのだから。

 私は強い覚悟を持って、彼の妻になることを誓った。



 それから結婚までは、本当にあっという間だった。

 社長はもともとスピード感を持って仕事をする人だけれど、私生活においてもこんなに早く物事を進めるとは思いもよらなかった。

 なにもかもが異例ずくめだ。

 翌日の仕事終わりに、今日は大安だからと言われて区役所に連行され、そのまま入籍。

 その後すぐに鳳凰寺家に連れていかれて、お義父様とお祖母様にご挨拶。

 秘書と結婚なんて、しかも挨拶の前に入籍を済ませているので、気分を害するのではないかとひやひやしながら向かった。

 にもかかわらず思いのほか歓迎されて逆に恐縮してしまった。

 帰る時になってやっとご実家の豪邸具合にドキドキするというくらい、その日の私はいまだかつてないほど緊張していた。

 彼はうちの母にも挨拶をするべきだと言ったが、丁重にお断りした。母にはこの結婚を知られたくない。

 まるで私の人生ジェットコースターみたい……。

 交際ゼロ日婚なんて聞くけれど、まさか自分が経験すると思わなかった。しかも決心した翌日には婚姻届を出すという超スピード婚だ。

 人生なにがあるかわからないけれど、ここまで数奇な運命をたどる人はなかなかいないのではないかと想像する。

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