【試し読み】お隣のハイスペ御曹司は一応、私の夫です~ビジネス婚のはずが旦那様は妻への溺愛が我慢できない~
あっという間に鼻先が触れるほどの距離に彼がいて、私はびっくりして身を引く。
「ほら、そうやってすぐに逃げる。これが仲よし夫婦の距離感か?」
彼と私を交互に指さしている。
「それはそうですけど……」
「夫婦の適正な距離感というものがある」
言っていることは理解できるが、急には無理だ。
「急には無理だと思ってるだろ?」
どうしてわかったの?
私は目を丸くして彼を見る。まさか心の中を見透かされているのだろうか。私は慌てて胸の前で腕をクロスした。
「そんなに警戒しなくても大丈夫だから。花南乃は自分ではポーカーフェイスできてるつもりかもしれないけど、結構ばれてるから」
次は慌てて顔を押さえると、彼がそれを見て声を出して笑った。
「心配しなくていい、俺以外は気が付いていない」
それを聞いてホッとした。
「安心しているようだけど、今のままだとこれからぼろが出る。だから少しずつ慣れる必要があるのはわかるな?」
「はい、もちろんです」
「それなら毎週金曜日、お互い特別な予定がない限り〝慣れる〟ための夫婦の時間を取ろう」
確かにこのままでは私は彼の求める〝愛され妻〟を演じることが難しい。恋愛経験が不足している私が引き受けたのがそもそも間違いだったのかもしれない。
でももう盛大な結婚式を挙げてしまったこうなったら覚悟を決めて〝愛され妻〟を演じるしかない。
「お手数をおかけします」