【試し読み】お隣のハイスペ御曹司は一応、私の夫です~ビジネス婚のはずが旦那様は妻への溺愛が我慢できない~
「ほら、また敬語使ってる」

 彼が人差し指で私の鼻先をつついた。

「すみま……ごめんなさい」

 とっさに言い直したが、これを改善するにはひとりでは無理そうだ。

「よろしくお願いします……このくらいの言葉遣いは許してほしい」

 まだ不服そうにしていた彼だが、しぶしぶといった様子で頷いた。

「しかたないな、君は仕事ができる人だからすぐに改善するだろう」

 普段の仕事とは違いすぎるけれど、大丈夫だろうか。

「そうだ、この際この結婚についていくつか取り決めをしないか?」

「それはいい……ね」

 まだたどたどしいのは許してほしい。彼はちらっと私を見たけれど話を続けた。

「以前言った通り、明日には引っ越してもらう。怪しまれないために隣同士の部屋を準備した。お互いのプライベートは守られるはずだ」

 結婚した以上同居の可能性も考えていた。別の部屋を用意してくれるなんてありがたい限りだ。家賃が浮くだけでもありがたい。

 私が頷くと、話を次に移した。

「次にある程度のスキンシップは許容してほしい」

「程度によります。今日だっていきなりキスされて、びっくりしたのに……」

 リハーサルと違ったことをされたのだ。抗議しておかなくては。職場では向こうが上司だが、プライベートでは私にだって主張する権利があるはずだ。

「仲がいい夫婦なんだから、人前であれくらいは普通だろう」

「……そうなんですか?」

「うちの両親はこんな感じだったけどな」

 残念ながら母は私をひとりで産んだので、夫婦というものがどういう生活を送るのかわかっていない。

 お義母様が十年前にご病気で亡くなる前は、かなり仲がよかったのだろう。それを参考にしているなら合わせるべきかもしれない。
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