【試し読み】お隣のハイスペ御曹司は一応、私の夫です~ビジネス婚のはずが旦那様は妻への溺愛が我慢できない~


 私、鳳凰寺花南乃は、鳳凰寺凌平の秘書であり、妻でもある。

 だからこそ、この距離で彼の隣にいることを許されているのだ。

 外に出るとすでに車が停まっていた。運転士がドアを開けて待っている。

 彼は車のフレームに手を添えて、私が頭をぶつけないようにする。さらっとそういうことができる人はこの日本にどのくらいいるだろうか。

 彼が私の隣に乗り込んでくる。

 車が走り出すと、彼が私を引き寄せて肩にもたれるように促した。

「今日も疲れただろう。家に着くまでこうして休んで」

「はい。ありがとう、凌平」

 私は彼に甘えるように、寄り添う。

 信号で止まると運転士が、バックミラーでチラッとこちらを見た。

「本当におふたりは仲がよろしいですね。みんなが憧れるのもわかります」

 運転士はニコニコと笑っている。

「仕方がない、俺が妻を好きすぎるからな。なぁ、そうだろ。花南乃」

「冗談はほどほどにして、恥ずかしい」

「本気だって、花南乃が一番わかってるはずだけど」

 彼は私の額に唇を寄せる。軽く唇が触れた。

 私は彼の行為に満足そうに微笑む。

 車はほどなくして、私たちの住むマンションの前に停まった。車から降りる際も彼は私の手を引くのを忘れない。

「段差がある、気を付けるんだ」

「はい」

 毎日通っているからもちろん知っている。

 しかし野暮なツッコミはせずに、甘んじて彼の優しさを受け入れる。

 彼は私の手を自身の腕に回してしっかり掴まらせた。
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