【試し読み】お隣のハイスペ御曹司は一応、私の夫です~ビジネス婚のはずが旦那様は妻への溺愛が我慢できない~
第一章 完璧な秘書、そして妻
第一章 完璧な秘書、そして妻

 ブラインドを上げると朝の眩しい光が社長室に降り注ぐ。

 社長室への人の出入りは制限されているので、環境を整えるのも秘書である私の仕事になっていた。

 デスクの上を調えてすぐに仕事にとりかかれるように、優先順位の高いものから並べる。観葉植物の世話をして彼が好むお茶とコーヒーをすぐに淹れられるように整えておく。

 そういえばそろそろサプリメントの注文をしなくてはいけない時期だと思い出し、スマートフォンを取り出してメモしておく。

 その後自分のデスクに戻り、スケジュールを確認して一日の計画を立てる。

「長谷さん、ちょっといいですか?」

「はい、どうぞ」

 振り向くと秘書課の後輩が、困った顔をして立っていた。

「社長の同席をお願いしたい案件がありまして。スケジュールの調整をお願いできればと思います」

 彼女の話を聞くと、気難しいとされる社長の名前があがって彼女が困っている理由がわかった。

 少し困ったところがある人だが、凌平が顔を出せば毎回丸く収まる。大きな契約前には、トップの顔を見たいということだろう。

「わかりました。この日とこの日の空き時間であれば、問題ないです。ただ食事の時間はさけましょう。時間がかかりすぎます」

 私の提案に、彼女は難色を示す。

「でも、それで納得をしてくれますか?」

「大丈夫。まずは賢六堂(けんろくどう)の茶室を抑えて。先方はそこの羊羹が大好物よ。今の時期は庭が見ごたえがあるから、十分満足してもらえるはず」

 短い時間でも満足させられれば問題ない。こういう時は経験がものをいう。

「手土産は奥様が好きな塩大福を忘れないように」

「手配しておきます。あの、また困ったことがあったら相談してもいいですか?」

「もちろんです。困る前でもなにかあれば声をかけてください」

「はい、ありがとうございます」

 納得した後輩は、笑顔になって戻っていった。

 一見して仕事に関係のないようなことでも、役に立つこともある。これは秘書という仕事の醍醐味のひとつだと思う。

 時計を確認すると、そろそろ打ち合わせが終わる頃だ。私は凌平を迎えに会議室に向かった。

 後のスケジュールも詰まっている。時間管理が秘書の腕の見せどころだ。

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