【試し読み】お隣のハイスペ御曹司は一応、私の夫です~ビジネス婚のはずが旦那様は妻への溺愛が我慢できない~
「長谷(はせ)さん、休憩中にすまない」
扉が開くと同時に名前を呼ばれた。入ってきたのはもちろん社長だ。
「はい、なにかありましたか?」
「実は明後日だけど、急にアメリカに行くことになった。期間は五日間。その間の予定のリスケと航空券とホテルの手配を頼む」
「はい、かしこまりました。ホテルのリクエストございますか?」
あぁ、これはものすごく大変だ。時間がないからひとつでもミスをすると挽回できない。慎重にでもスピーディに処理しなくてはいけない。
内心は焦っているが表には出さずにいられたのは、三年間で培った冷静に見せる技のお陰である。
「すぐに今回の訪問先のリストを送る。それらにアクセスしやすい場所がいい。判断は任せる」
「かしこまりました。すぐに手配いたします」
「さすがだな、顔色ひとつ変えずに俺のリクエストに応えるなんて」
これまでもひやひやすることは何度もあった。
そもそも鳳凰寺凌平という人は、恐ろしく頭の回転の速い人である。その上即断即決。すぐに行動に移す上に、ときに強引に物事を進めることも多い。
だからこそこの流れの速い金融界の中でもトップクラスの投資実績を持つのだ。
そんな彼についていくのは、かなりの努力を要した。失敗だって何度もした。
それでもここまで続けられたのは、彼が私を信頼してくれているからだと思う。
彼の行動の先を読み、同じ失敗をしない。無理難題だとしても、どうにかして形にすることを繰り返すことで、彼が私にくれる信頼は大きくなってた。
直接言葉で言われなくても「君ならできるだろう」と伝わる。
「じゃあ、よろしくたのんだ」
「詳細はあとでメールいたします。では」
私は頭をさげながら、頭の中にあるTODOリストを高速で更新し続けた。