悪魔な義理弟《ボディーガード》~ヤンキー校最凶犬男子の独占欲が強過ぎる~
「おい、おっさん」
そして、公演終了後。
最後の客が部屋から出て行ったのを見計らって、俺達は会場内に乗り込んだ。
「なんだ君達は?ここは学生が来るような場所じゃないぞ」
制服姿の俺達を見た途端、急に険しい顔付きになった後頭部ハゲのおっさんは、怪訝な目を向けて警戒心を露わにしてきた。
「あんた本物の催眠術師なんだろ。ちょっと術をかけて欲しい人がいるんだけど、俺達に付き合ってくんね?」
それから、回りくどいことは嫌いなので単刀直入に切り込んだら、いつの間にか背後に立っていた黒いスーツ姿のガタイがいい男に、突然首根っこを掴まれた。
「おいおい、困るんだよ。ここはガキの遊び場じゃねえんだ。おじさん達は忙しいからさっさとお家に帰りな」
そう言って、部屋の外に追い出されそうになった手前。
俺は首元を掴む男の手首を握ると、そのまま力任せに背負い投げをした。
男は背中を床に強く打ち付け、短い悲鳴が上がったと同時に、こいつの胸元を勢いよく踏み付ける。
「なあ、あんたらここで荒稼ぎしてんだろ?だから、いいじゃねえかよ。学生の頼みを一つや二つ聞いてくれても」
そして、痛みに悶えるスーツ姿の男がなんだか滑稽に見えて、俺はポケットに手を突っ込みながら踏み付ける足に力を込めた。
「……な、なんだこいつ。全然ビクともしねえ……」
どうやら、こっちの話は一切聞くつもりはないようで。
スーツ姿の男は何とか俺の足をどかそうと尚も抵抗してくるので、諦めて靴の踵で急所を強く蹴り付けたら、一瞬にして気絶してしまった。
「てめら、ふざけるのもいい加減にしろ!俺達を誰だと思って……」
それから、傍で突っ立っていたもう一人のサングラスをかけた男が、殴りかかろうとした矢先。
それを遮るように、圭は男の目前で思いっきり部屋の壁を蹴り付けた瞬間、鈍い音と共に壁には綺麗な穴がぽっかりと開いた。
「勿論知ってるよ。でもいいの?そんな名だたる組合員がこんな一学生にやられたなんて知られたら、あんたらの立場が危ないんじゃない?」
そう脅しをかける圭の表情は相変わらず崩れることはなく、満面の笑みを男に向ける。
それに怖気付き始めたサングラスの男は言い淀んでいると、圭は容赦無く男の首を掴み、そのまま壊れた壁に頭を叩きつけた。
「ねえ。少しでいいから、この催眠術師のおっさん貸してよ。すぐ返すから」
そして、甘い声で優しく語りかけながらも、首を掴む手にはどんどんと力が込められているようで、男は次第に泡を吹き始め、助けを乞うように首を必死に縦に振る。
「じゃあ、そういうことだから。いいよな?」
とりあえず、話はついたということにして。
俺は地面に尻餅をついて怯える後頭部ハゲのおっさんを見下ろしながら、笑顔でそう尋ねる。
「は、はい。もう好きにしてください。だから、どうか命だけは助けてください!」
すると、おっさんは必死な表情で、地面に頭を擦り付けてきた。