悪魔な義理弟《ボディーガード》~ヤンキー校最凶犬男子の独占欲が強過ぎる~
「あの、櫂理君が何かしちゃいましたか?それなら、私が謝ります。ていうか、もうすぐ授業始まりますけど?」
先程から一言も喋らない雨宮君に痺れを切らした私は、ダメ元で話しかけてみたけど、一向に反応がなく、やっぱり空振りに終わってしまった。
「てかさー、雨宮君ってもしかして弟君追いかけてこの学校に転校してきたの?だとしたら、相当ラブじゃん」
「お前、これ以上ふざけた事言ったら殺すぞ」
すると、隣で茶化してきた美南に対しては即座に反応を示し、雨宮君は射抜くような目で睨んできた。
こんな凶器みたいな転校生を弄れる美南の度胸には、相変わらず恐れ入る。
「ここに来たのは単なる親の都合だ。……けど、そのお陰でようやくあいつを見つけた」
最後にポツリと呟いた雨宮君の目は怒りに満ち溢れていて。ここまで恨みを買う程とは、一体二人の間に何が起きたのか気になって仕方がない。
果たして、このまま櫂理君のところに案内していいのか不安でしかないけど、案内してもしなくてもあまり状況は変わらない気がする。
だとしたら、ここは姉としてその場に居合わせた方がいいのではと。
変な使命感に燃えている最中、いつの間にやら一年生の教室がある三階へと到着していた。
あと数分で授業が始まるので、手短に済ませようと私は急いで櫂理君の教室へと案内する。
そして、閉まっていた扉をおそるおそる開いた直後。
「あ、雨宮君!?」
あろうことか、突然雨宮君が勢い良く教室の扉を開き、その大きな音に全生徒の視線がこちらに集中する。
「宇佐美櫂理はどこだ!?」
それから、割れんばかりの大きな声で櫂理君の名前を叫んだ途端、教室内でどよめきが起きた。
「ちょ、ちょっと雨宮君。流石に他クラスで暴れるのは……」
このままだと殴り込む勢いなので、私は慌てて彼を止めようと腕を掴んだ矢先。
「てめえ、莉子の何なんだよ?」
雨宮君が叫んだ時は何も反応がなかったのに、いつの間にやら目の前には怒りを露わにした櫂理君が立っていた。
その瞬間、雨宮君は私の手を払い、櫂理君の胸ぐらを掴み上げ、顔面目掛けて拳を振り下ろす。
しかし、すんでのところで櫂理君はそれを掌で受け止め、雨宮君を睨み付けた。
「あんた誰?俺に何の用?」
それから、静かな口調で尋ねると、雨宮君は不敵な笑みを浮かべる。
「それは後で話す。とりあえず今は殴らせろ」
「あっそ。分かった」
………え?
いいの??
普通順序が逆では?とツッコミたくなったけど、二人の間では平常運転らしく、ヤンキーの世界はよく分からない。
それに、櫂理君の反応を見た限りだと面識がなさそうだし、一体どういうことなんだろう……。