悪魔な義理弟《ボディーガード》~ヤンキー校最凶犬男子の独占欲が強過ぎる~
恋煩い《櫂理side》
“櫂理君は私の大切な弟だから”
昨日の莉子の言葉が、ずっと頭から離れない。
弟扱いなんていつものことなのに、なぜかあの時は深く刺さってしまった。
莉子が俺を男として見る可能性はかなり低い。
そんなの始めから分かっていたはずなのに、改めて現実を突きつけられた気がして、柄にもなく落ち込んでる。
「なに?また莉子さんにフラれたの?」
それを知ってか知らずか。
最上階部屋でぼんやり窓の外を眺めていたら、隣で本を読んでいた圭が容赦なく痛いところを突いてきた。
「分かってるなら、いちいち聞くんじゃねーよ」
このやり取りは、もう何回目になることか。
言葉にしなくても、俺が落ち込んでいると大体弄ってくる。
それは心配だからなのか、ただ面白がっているだけなのか。表情が乏しいこいつから本心を読み取るのは、かなり至難の業だ。
「櫂理って見た目によらず本当一途だよね。俺はそこまで人に拘ったことないから、ある意味羨ましいわ」
「なあ。それ褒めてんの?貶してんの?」
「さあ?どっちだろうねー」
やっぱり、後者だ。
こいつ、完全に面白がってる。
まったく。
人の気持ちをなんだと思ってんだ。
相手にするのが段々とバカらしくなってきて、深い溜息をはくと、再び視線を窓の外に向ける。
「……ぐっ!」
その直後。突然背後から誰かに背中を強く蹴られ、不意を突かれた俺は受け身が取れず、危うく自分の体で窓を破りそうになった。
「本当に隙だらけだな」
一体どこのどいつなのか。即座に戦闘モードに切り替わり、勢いよく振り返ると、そこには涼しい顔をしてこちらを見下ろす優星が立っていた。
「てめえ、ふざけんな!窓割ったら次は弁償だって言ってんだろっ!」
本当に、ここに居るとおちおち感傷にも浸ってられない。
虫の居所がすこぶる悪い俺は、この怒りを優星にぶつけようと拳を握り締めた時だった。
「ねえ、雨宮先輩。それどういう意味?」
間髪入れず、圭が静かな口調で優星に問い掛ける。
「落ち込んでるんだか何だか知らないが、いつもの鋭さがないから狙いやすいかもって、周りに言われてるぞ。どいつもこいつも最上階部屋の乗っ取り話で持ちきりだ」
そう答えると、優星は呆れた面持ちで近くにあった椅子に腰を下ろした。
そういえば、莉子もそんなこと言ってたな。
どうでもよすぎて、すっかり忘れてた。