原始の湖畔、サファイアの瞳
 どんな宝石も知らない少年にとって、それは宇宙で一番深い青。  
 自分の薄汚れた姿を、まるごと許してくれるような『サファイア』の輝き。

 その青の中に、少年は静かに自分の魂を投げ入れた――。

 泥にまみれた茶色の瞳が、月光と彼女の羽ばたきに照らされて、じわりと色を変えていく。

 濁っていた少年の視界が、不純物のない、どこまでも澄み渡った「青」に塗り替えられていった。
 
 彼女が見ていた空の色。 彼女が愛した湖の輝き。
 少年が力強く地を蹴り、空へと舞い上がる。

 彼女もまた、それを追うように銀色の軌跡を描いて羽ばたいた。
 眼下に広がるのは、孤独に震えた洞窟、血を流した森、憎しみ合った地上。

 少年は一瞬だけ、慈しむように目を閉じた。そして、もう二度と振り返ることはなかった。

(行こう。ここから、僕たちの本当の時間が始まるんだ)

 少年の瞳が完全なサファイアへと染まったとき、彼は初めて、人間としての「言葉」ではなく、命としての「光」で彼女と対話したのだ。


 二羽の白い影は、重なり合うようにして、光の彼方へと消えていった。

 終わり
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