原始の湖畔、サファイアの瞳
二人の生活
 ――翌朝。 目を覚ますと、二人は互いの体温を分け合うように寄り添って眠っていた。
 少年はゆっくりと身体を起こし、噛まれた足の痛みを確かめる。

 それを隣で見つめる白鳥の瞳には、案じるような、それでいて深い信頼を湛えた色が宿っていた。

 少年は周囲の気配を殺し、狼がいないことを確認すると、湖の水を両手ですくった。
 自分の喉を潤すより先に、それを彼女のくちばしへと差し出す。

 白鳥は静かに水を飲み干すと、朝日に向かって大きく羽を広げ、背伸びをするように羽を動かした。

 彼女は少年の顔を一度見つめると、誘うように湖へと歩き出す。
 少年は石槍を強く握り直し、彼女の背中を護るように付き添った。

 彼女が水面にふわりと浮かぶ。 少年もまた、冷たい水に膝まで浸かり、彼女の隣で同じ水をすくって飲んだ。

 降り注ぐ日差しを浴びて、銀色に光る水面。

 そこに浮かぶ白鳥の神々しい美しさに、少年は口元の水を拭うことさえ忘れ、ただ魂を奪われて立ち尽くしていた。

「バサバサッ」 水面を叩く羽の音。だが、片方の翼が重く沈み、飛沫はぎこちなく散った。

 少年は(無理をするな)と、祈るように大きな両手を差し出す。
 すると彼女は、その心を見透かしたかのように、水面を滑って彼の懐へと飛び込んできた。
< 5 / 17 >

この作品をシェア

pagetop