原始の湖畔、サファイアの瞳
 腕の中に収まる、温かく柔らかな命の塊。

 抱きしめた瞬間、少年の内側に、これまで知るはずのなかった「愛おしさ」が洪水のように溢れ出した。

 ズキン、と再び胸の奥が疼く。 少年は慌てて自分の胸を探った。

 狼に刻まれた傷なら、もう塞がっているはずだ。 なのに、どうしてこんなに苦しく、熱いのだろう。

 ふと見ると、水面に彼女の白い羽が一枚、静かに浮いていた。

 少年はそれを大切に拾い上げると、神聖な宝物を扱うように、自分の耳元へと差し込んだ。

 泥にまみれた少年の横顔に、純白の羽が一つ。

 それは、彼が「人間の群れ」を捨て、彼女の隣で生きることを誓った、静かな始まりの儀式ようでもあった。
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